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グリシンの効果

グリシンとは

グリシンは、アミノ酸の一種であり、中でも最も単純な構造をしています。
タンパク質の構成成分として、豚ゼラチンや甲殻類、小麦タンパクなど食品中にも広く含まれています。
また、甘みのあるアミノ酸であり、魚類や貝類には遊離状態で存在し、旨味成分を構成する一つとなっています。

グリシンの日持ち向上への利用

グリシンは主に耐熱性菌に対して抗菌作用を示します。

ただ、グリシンの添加量が多くなると、アミノカルボニル反応(メーラード反応)と呼ばれるアミノ酸と還元糖の反応により、褐変物質であるメラノイジンが生成されやすくなり、食品が褐変しやすい・焦げやすいといったデメリットが生じます。

単品では比較的多くの添加量を必要としますが、他の成分と併用することで相乗効果を示します。
酢酸ナトリウムやポリリジンなど様々な物質と併用するケースがあり、それぞれ単品で添加するよりも高い抗菌力を発揮します。
併用することで少ない添加量で微生物の増殖を抑制することができますので、味への影響や焦げるなどのデメリットが出にくくなり、美味しく微生物制御が可能となります。

菌へのグリシンのはたらき

グリシンが増殖を抑える微生物は、限定的です。
なぜ限定的であるか見てみます。

細菌類に対して

細菌は、細胞分裂と伸長によって増えていきます。
細菌の細胞壁はペプチドグリカンといわれるアミノ酸が繋がったものと糖が繋がったもので構成されています。
このペプチドグリカンを構成するアミノ酸の一つにL-アラニンがあり、グリシンに次いで単純な構造をしています。

過剰にグリシンが存在することで、細菌が増える際にL-アラニンの替わりにグリシンが取り込まれ、正常なペプチドグリカンの合成ができなくなります。
その結果、ペプチドグリカンの構造が不安定となり、細菌の生育も抑えられていきます。

このような効果で菌の増殖を抑えているので、ペプチドグリカンが細胞壁の主要構造となっているグラム陽性菌である耐熱菌などに対してより抗菌作用を示します。

一方で、グラム陰性菌はペプチドグリカンの外側にリポ多糖といわれるもので覆われているため、グリシンが入りにくく、効果が弱いです。

真菌類に対して

真菌類に対してはどうでしょうか。

真菌類の細胞壁はキチンやβグルカンと呼ばれる多糖で構成されており、細菌類のようにペプチドグリカンをもっていません。

そのためペプチドグリカンに作用するグリシンは、真菌類であるカビや酵母に対して抗菌作用を示しません。
《出典》
Food Additives to Control Microorganisms: Mechanisms and Current Status / Hiroaki Koiso 
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