本文へ移動

肉の色について

該当業種・ニーズ

業種

  • 畜肉加工
  • 冷凍食品
  • 惣菜
  • お弁当

ニーズ

  • 肉を発色をコントロールしたい
  • 肉が変色する理由を知りたい
  • 鶏肉が緑色に変色して困っている

畜肉の構造

食用の畜肉は骨格筋と呼ばれ、約21%前後が筋肉タンパク質、約70%前後は水分からなります。
筋肉タンパク質は、筋原線維タンパク質、筋漿タンパク質、肉基質タンパク質に分けられます。
これまでの配信で筋肉タンパク質の約50%は筋原線維タンパク質、約20%は肉基質タンパク質からなり、それぞれの食感改良に対するアプローチ方法をご紹介致しました。
残りの約30%は筋漿タンパク質で構成されています。
筋漿タンパク質は、筋原線維間に存在する汁液部分(肉漿)に溶けた状態で存在する水溶性の球状タンパク質です。
主に、酸素運搬に関わる「ミオグロビン」や、エネルギーを生み出す生命活動に必要な酵素を含む「ミオゲン」といったタンパク質などがあります。
ミオグロビンは、ヘム(鉄ポルフィリン)とグロビン(球状のタンパク質)からなる色素タンパク質であり、肉の赤色はこのタンパク質の色に由来しています。
なお、血管内の血液中に存在する色素タンパク質は、「ヘモグロビン」といいます。 ミオゲンは筋漿タンパク質の65%を占め、主に解糖系に関わる酵素を含み、食肉においては無酸素状態の死後硬直中にグリコーゲンが解糖系で消費され、最終的に乳酸が生成されます。
畜肉を茹でた時に出てくる「アク」の原因のひとつは、この水溶性の筋漿タンパク質が流出し凝固したものです。

畜肉の色

前項でご説明の通り、畜肉の赤色はミオグロビンによるものであり、ミオグロビンの含量によって肉の色の濃さは異なります。
そのため、ミオグロビン含量の少ない鶏肉は白っぽく、多い牛肉は赤い色を呈しています。
また、年齢と部位によってもミオグロビンの含量は異なっており、仔牛よりも老齢牛で多く含み、運動のため酸素を多く消費する部位で多く含まれています。
一方で、肉の色調は、ミオグロビンに含まれる鉄の酸化状態によって決まります。
新鮮な生肉は、酸素を消費し無酸素状態ですので、2価の鉄を含む還元型(還元ミオグロビン:Mb)であり紫赤色を呈しています。 
このMbが空気と触れることで酸素分子が結合し、酸化型(オキシミオグロビン:MbO2)となり鮮赤色を呈します。 
MbからMbO2になり色が鮮やかに変化する、この現象はブルーミングと呼ばれています。 
MbO2の状態からさらに酸化が進み、ヘムの2価の鉄が3価になるメト化により、メト型(メトミオグロビン:MetMb)となり褐色を呈します。 
また、加熱によってもメト化が進みますので、肉を焼いた際に褐色となりますのは、この現象によるものです。 
メトミオグロビンを還元することで、還元ミオグロビンとなり紫赤色へと戻りますが、加熱変性したメトミオグロビンは戻りません。

畜肉製品の発色と変色

ピンク色の発色

ハムやソーセージのような畜肉製品は加熱処理しているにもかかわらず、鮮やかな赤色を呈しています。
これは、発色剤である亜硝酸塩などの添加により発生する一酸化窒素とMbが関係しています。
死後硬直後の畜肉中には解糖により乳酸が増えるとご説明しましたが、この乳酸と亜硝酸塩が反応することで、亜硝酸が生成されます。
亜硝酸は還元されることで、一酸化窒素が生成されます。 一酸化窒素はMbと反応結合することで、ニトロソミオグロビン:MbNOとなり鮮赤色を呈します。
一酸化窒素と結合したFe2+は非常に安定した構造であり、加熱してもFe2+は酸化されず一酸化窒素も解離されずに、ニトロソミオヘモクロモーゲンとなり桃赤色を呈し鮮やかな色を保持します。
また、肉中に存在する細菌の還元作用によって硝酸塩から亜硝酸塩が生成されます。
硝酸塩は土壌に広く存在し、植物の生育に必要な窒素の供給源ですので、野菜中にも含まれています。
まれにハンバーグなど野菜を練り込む食品で、十分加熱調理しても肉が赤く生焼けのように見える現象は、野菜に含まれる硝酸塩をきっかけにMbがMbNOに変化することで起きていると言われています。

緑色の変色

畜肉製品を長期間置いておくことで緑変化していきますが、この現象はMb中のヘム(鉄ポルフィリン)を構成するポルフィリンが酸化し、緑色を呈するコールグロビンが生成されることで引き起こされます。 
このポルフィリンを酸化する要因は主に3つあります。 

一つ目は、過剰の亜硝酸が存在すると、その酸化作用を受け、コールグロビンとなります。
 
二つ目は、発色促進剤として使用されるアスコルビン酸に起因するものです。 
アスコルビン酸が、ヘム鉄をFe3+→Fe2+に還元する際、自身は酸化されデヒドロアスコルビン酸となりますが、この反応に伴って生成された過酸化水素により酸化されます。
 
三つ目は、微生物に起因するものです。 
乳酸菌の繁殖によって発生した過酸化水素により酸化され緑変し、さらに酸化が進むと黄色や無色に変化します。 
このことから、畜肉製品の緑変を防止するには、適切な添加物の添加量と浸漬時間、衛生管理の徹底が重要となります。
出典:現代の食品化学/並木満夫 他/三共出版㈱

 
TOPへ戻る