肉とリン酸塩の関係
該当業種・ニーズ
業種
- 畜肉加工
- 冷凍食品
- 惣菜
- お弁当
ニーズ
- 柔らかい唐揚げを作りたい
- 肉にリン酸塩を使う理由を知りたい
畜肉の構造
食用の畜肉は骨格筋と呼ばれ、約21%前後が筋肉タンパク質、約70%前後は水分からなります。
筋肉タンパク質は、筋原線維タンパク質、筋漿タンパク質、肉基質タンパク質に分けられます。
この筋肉タンパク質の約50%は筋原線維が占めており、主にアクチンとミオシンから構成されています。
これらは塩溶性のタンパク質であり、塩類の添加により溶出し保水性が向上します。
特にミオシンが肉の保水性や結着性の向上に大きく影響すると言われてます。
これは加熱によるミオシンのゲル化を介して肉の組織同士の結着性が向上し立体的な網目構造が形成され、この中に水分を保持し保水性が向上するためです。
しかしながら、死後硬直の際にミオシンはアクチンと結合し、アクトミオシンと呼ばれる硬い複合タンパク質となっています。 加工時に用いる肉は死後硬直期を経過していますので、アクトミオシンが多くを占めています。
肉のpHは本来pH7付近ですが、死後硬直が進むと同時に最も保水力の低い等電点付近のpH5.5にまで低下します。
これは、筋肉中に含まれる運動のエネルギー源の貯蔵体であるグリコーゲンが分解され、乳酸が生成されるためです。
このように加工時に用いる畜肉は保水性の悪い状態にあります。
実際には熟成と呼ばれる工程を経ているので、死後硬直期より軟化した畜肉を用いることになりますが、その食感品質や保水性は不十分です。
リン酸塩の品質改良メカニズム
①pH調整
肉のpHをアルカリ側に移動させ、肉の等電点からpHを遠ざけることで筋肉タンパク質同士の電気的な反発により間隔が広がり保水性を高めることができます。
リン酸塩のpHも代表的なトリポリリン酸ナトリウムでpH9.7、ピロリン酸ナトリウムでpH10.2ですので、肉をアルカリ側に調整し保水性を高めます。
しかしこれは前回ご説明した保水の一般理論の一つであり、リン酸塩の特異的な作用ではありません。
②イオン強度と塩溶効果
リン酸塩は多価アニオン(マイナスイオン)であり、塩溶効果に優れています。
トリポリリン酸ナトリウムのイオン強度(1g/100ml)は0.408であり、食塩の0.171と比較しても高いことがわかります。
そのため、少量の添加でイオン強度を高め、アクトミオシンやミオシンなどの塩溶性タンパク質を溶出させることができます。
また、イオン強度はpHの効果と同様に、筋肉タンパク質の電気的な反発により保水性が向上します。
リン酸塩は、塩溶性タンパク質の溶出による肉組織内の網目構造の形成と電気的反発による間隔の広がりにより肉の保水性を高めます。
③アクトミオシン分割作用
加工時に用いる肉から溶出される塩溶性タンパク質は、死後硬直期を経過しているので主に硬いアクトミオシンが占めています。
しかし、肉の保水性の向上にはミオシンであることが重要です。
リン酸塩は、アクトミオシンをアクチンとミオシンに分割する作用があります。
アクチンとミオシンはマグネシウムイオンにより架橋し、アクトミオシンとなっています。
リン酸塩の中でもピロリン酸が、このマグネシウムイオンに作用し架橋を切断することで、ミオシンの溶出量を増加させることができます。
リン酸塩製剤の利用
リン酸塩は、上記一例で記載したトリポリリン酸ナトリウムやピロリン酸ナトリウム以外にも重合度の違いにより様々な種類が存在します。
その種類によって、pHや緩衝能、溶解度など機能や特性が異なります。
畜肉加工でリン酸塩の効果を十分に発揮させるには、リン酸塩単品使用ではなく複数併用することがポイントとなります。
複数のリン酸塩を配合製剤化することで、畜肉加工に最適なpHに調整、溶解性の改善、作業効率の向上といった利点があります。
畜肉加工に最適なリン酸塩製剤を取り揃えておりますので、是非一度ご連絡下さい。